インフレ期待今やピークか-バリュー株やTIPS、商品に変動予兆
Denitsa Tsekova-
債券投資家は2013年以降最も速いペースでインフレヘッジを解消
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ウェルズ・ファーゴは長く続けてきたバリュー株選好の方針を転換
インフレを巡り絶え間ない攻撃にさらされてきた米連邦準備制度にとって、一時的勝利といえるかもしれない。歴史的高水準に達していたウォール街のインフレ期待がようやく沈静化しつつある。
債券利回りから派生する今後10年の物価上昇期待が低下し、企業業績や価値に比べて割安なバリュー株のブームの流れが反転し、工業用原材料商品のスーパーサイクル(超長期サイクル)の勢いも弱まりつつある。
これらの現象は、2022年のグレートインフレーショントレードがピークを迎えつつある可能性が高いとはっきりうかがわせるシグナルだ。ビル・アックマン氏のような反対論者の正当性に異議を唱え、クロスアセットのトレーディングゲームを動揺させかねないレジームシフト(大変動)かもしれない。
連邦準備制度の金融政策引き締めが、景気循環の過熱を抑制し始めている。借り入れコスト上昇と株価下落を通じて、金融の引き締まりが消費者と企業に痛みを与えており、モノの消費ブームが終わり主要な小売業者で在庫が積み上がっている。
プリンシパル・グローバル・インベスターズのチーフグローバルストラテジスト、シーマ・シャー氏は「米国のインフレはピーク到達に近づきつつあるようだ。消費者はモノからサービスにシフトし、全体の需要は鈍化し、コア消費財の物価圧力もよりデフレ気味になりつつある」と指摘した。
米国債とインフレ連動国債(TIPS)の利回り格差を示し、インフレ期待を反映するブレークイーブンインフレ率(BEI)は、5年と10年でいずれも、ロシアのウクライナ侵攻で小麦とエネルギー価格が急騰する以前の水準まで再び低下した。
今後5年のインフレ期待を反映するBEIは2.8%前後と、連邦準備制度の2%の目標に近い平均物価の推移を市場参加者が見込んでいる様子がうかがえる。
ブルームバーグ商品スポット指数は3月以降の最低水準まで下げ、上場投資信託(ETF)の「インベスコDBアグリカルチャー・ファンド」(資産額19億ドル=約2584億円)は、週間ベースとしては08年以降で最大の資金流出に見舞われた。
「iシェアーズ米国物価連動国債ETF」は、米国債の実質利回りを反映するTIPSで構成する指数と同等の投資成果を目指す商品だが、2四半期連続の資金流出は2013年以降で最速ペースとなった。
長く続けてきたバリュー株選好の方針を転換したウェルズ・ファーゴの株式戦略責任者クリストファー・ハーベイ氏は、「景気が減速しつつある状況にあり、より長期のインフレ期待も和らぎつつあるようだ。われわれは一定の成果を挙げた後、約2週間前にシクリカル(景気循環)陣営を離れた」と説明した。
原題:
Great Inflation Trade on Wall Street Peaking Across Assets (1)(抜粋)