ESGリンク仕組商品の分析・構築・リスク管理法

Read the English version published on May 29, 2022.

本稿はブルームバーグ仕組商品のグローバル・プロダクト・マネジャー、Nitin Anandaが執筆しました。

環境・社会・ガバナンス(ESG)にリンクした仕組商品の発行はこのところ急増し、その発行額はゼロから約100-150億ドルとなりました。成長の一因には、投資家がESG要因へのエクスポージャーのカスタマイズを目指してきたことがあります。この発行額の急増はさらに幅広いトレンドも反映しており、ESG資産の運用資産残高は2020年時点では35兆ドル超でしたが、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の試算では2025年までに50兆ドルに達する見込みです。

ESGが普及すれば地球に非常に良い影響がもたらされることには疑いの余地はない一方で、こうした短期間での急成長には全般的な不安が残ります。ESG投資は、仕組商品、シンプルな商品のいかんを問わず、提供されるデータの妥当性と同レベルの妥当性を持ちます。信頼できる比較可能なデータがなければ、投資家は手探り状態でグリーンウォッシュのリスクにさらされ、投資の指針として一貫性のない基準や裏付けに乏しい証拠に依存することになります。また、ファンドマネジャーもESGの観点で下した決定について理由を明確に説明できず、投資家から批判を招く可能性もあります。

多くの国・地域では、すでにデータの質、一貫性、可用性を向上させるため協調して取り組んでいます。例えばEUでは、サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)、EUタクソノミーなどの規則により開示要件が厳格化され、何が「グリーン」に含まれるのかの定義の標準化に役立っています。アジア太平洋など他の地域では、独自のタクソノミーに取り組んでいます。「グリーンファイナンス」の定義がより明確になるまでは、ESGを重視する投資家は引き続きグリーンウォッシュ問題に対処する必要があるでしょう。

ESG考慮事項の他にも、投資家は仕組商品に付帯した一般的な問題にも直面します。つまり、仕組商品の価値を適切に判断する分析ツールを持たない会社は、仕組商品をポートフォリオに組み入れることが難しくなります。さらに取引後の分野では、トップクラスではないセルサイドマーケットメーカーは効果的なリスク管理ツールを構築できないのです。ベンダーが提供する大半のソリューションには大きなギャップがあり、社内でのシステム構築には何年もの期間と莫大なコストを要することが多くあります。

データの可用性と質:ポジティブな進化

ESGを重視する投資家にとって幸いなことに、金融市場は、10年以上前から透明性の高いESGデータを重要視してきたブルームバーグのような企業がリーダーシップを取る、グリーンデータ革命の渦中にあります。

ブルームバーグは100カ国以上の約1万2000社、41万銘柄以上のESGデータを15年以上のヒストリカルデータにわたって提供しています。ESGデータは投資家が毎日使用するブルームバーグ ターミナルの画面・ツール上で利用することが可能で、合理化されたワークフローを生み出し、ESG考慮事項の組み入れを容易にしています。例えば、株式スクリーニングを行う際にターミナルでよく使われるEQS (株式スクリーニング)機能のようなツールの一部にはカスタマイズが可能なESG検索機能が備わっており、スコアに基づいて企業をフィルタリングできます。

ブルームバーグが提供するサステナブルファイナンス関連サービスには、企業報告、独自データ、第三者データに加え、炭素推定値、スコア、インデックス、リサーチ、ニュースなどがあります。こうしたサービスを通じて、投資会社や企業が運用資産、資本配分、融資、サステナビリティ開示要件およびパフォーマンスの報告をより正確に評価できるよう支援しています。

取引前分析と仕組商品の構築

投資家が信頼できるデータを用いて、まずESGの関心分野を特定した後のステップは、市場リスクを総合的に把握するために適切な取引前分析を行うことです。取引前分析はブルームバーグ・デリバティブ・ライブラリー(DLIB)プラットフォームで実行可能で、バリュエーション、バックテスト、モンテカルロ予想などの機能が提供されています。

ブルームバーグ・データはAPIやExcel上で利用できるため、ESGデータをDLIBの他の変数と組み合わせ、特定の企業のESG特性をより幅広く理解し、強力な取引前・取引後ツールを構築することが可能です。例えば、ブルームバーグのガバナンススコアは、企業の業績に重大な影響を与え得る取締役会構成および役員報酬の2つの要素を4500社以上を対象に分析します。投資家はこうしたガバナンススコアを仕組債分析に統合することができます。

まずS&Pインデックスを使用し、ベンチマークスコアやESG指標に基づき企業をフィルタリングすることも可能です。その後、DLIBのExcel自動コーラブル債バスケット・オプティマイザーでフィルタリングされた銘柄の小さなサブセットを使って、高クーポン債やダウンサイドリスクの軽減などのニーズに合致する企業の最適な組み合わせを見つけることができます。

取引後分析

さらに投資家は、個々のESG要素を取得・集計し、自社のESG指標に照らし合わせてポートフォリオパフォーマンスを評価する必要があるでしょう。これはESGリンク仕組商品の評価における最終ステップであり、適切な取引後分析ツールを持たない企業にとってはとりわけ困難な問題となることがあります。

この点で、ブルームバーグのマルチアセット・リスクシステム(MARS)機能なら、ポートフォリオマネジャーはポートフォリオにおけるESG要因のネット・エクスポージャーを把握することができます。必要に応じてリアルタイムデータを用いてポートフォリオの現在価値のモニタリング、期間構造リスクと投資決定の分析、そして日中のライフサイクルとキャッシュフローの管理を実行することができます。こうした機能はすべて、1つの統合されたプラットフォーム上に搭載されています。

ESG革命が勢いを増す中、その動きを十分に把握し理解するために仕組商品の投資家には優れたデータ、優れた取引前分析、優れた取引後分析の3つの要素が必要です。ブルームバーグはユニークかつ包括的な一連のESGデータやソリューションを提供することで、企業がこうした新たな課題の管理だけではなく、サステナブルファイナンス考慮事項を戦略的意思決定に一体化できるよう支援します。

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

デモ申し込み