活況のグリーンボンド市場-新興国の企業も参入

Read the English version published on November 19, 2021.

本稿は、ブルームバーグ・インテリジェンスのシニアアナリストAdeline Diabが執筆し、ブルームバーグターミナルに最初に掲載されました。

コロナ禍以降、グリーンボンドのリターンは2倍になっています。好調さの理由として、より高い格付けの発行体による起債や、「グリーン」の定義に該当しないセクタ-の除外、デュレーションの長期化が挙げられます。2021年は金利が上昇する中で相場は反落したものの、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)では、新たな発行体も加わりグリーンボンド市場の活況は続くと予想しています。世界のグリーンボンドの発行額は欧州がトップで、中国は米国を上回っています。一方、中国を除く新興国市場の発行額は2019年以来約3倍に成長しており、この流れは加速するとみられます。

グリーンボンド指数、世界総合指数をアンダーパフォームも見通し良好

グリーンボンドは2020年7-12月(下期)を通じて他市場を大幅にアウトパフォームし、コロナ禍後の景気回復、スプレッドの縮小、中央銀行の積極的な利下げが寄与し、リターンの上昇が加速しました。しかし、2021年に入ると、ブルームバーグMSCIグローバル・グリーンボンド・インデックス(GBGL)のリターンはブルームバーグ・グローバル総合債券インデックス(LEGA)を下回りました。金利の上昇や相対的に控え目なキャリー、ドル高などがその背景にあるとみられます。このマクロ環境は続くかもしれませんが、BIではグリーンボンドの魅力は失われないとみています。その要因として、より高い格付けの発行体による起債や、環境に配慮した経済回復を狙う「グリーンリカバリー」の勢いに伴う「グリーン」に該当しないセクターの除外、そして多種多様な発行体の市場への参加が挙げられます。

GBGLはLEGAより欧州通貨建ての債券の比重が大きくなっています。一方、LEGAは米国銘柄の比重が大きく、どちらも発行体の80%が企業で40%が政府となっています。

金融機関のグリーンボンドが増加、新興国の企業も参入

金融市場でグリーン投資の機会が拡大し、投資家説明会や決算発表でもこの分野の投資が重要なテーマとして扱われるようになる中、2021年はこれまでのところ、世界のグリーンボンド発行市場の約65%を企業の発行体が占めています。中でも、グリーンボンド発行市場の成長をけん引しているのが金融セクターで、公益事業セクターがそれに続いており、BIでは両セクターによる発行額は今後さらに増加すると予想しています。新興国の企業による起債は大幅に増加しており、発行額はこの4年で6倍になりました。その増加分の3分の2は過去2年間で達成されています。足元の伸び率を将来の指標とするならば、新興国の企業は2025年までに3200億ドル超(約36兆5600億円)のグリーンボンドを起債する可能性があります。これは、BIの基本シナリオで予想される全世界のグリーンボンド発行額の5.5%以上に相当し、すでに活況な市場で大きなシェアを確保することが見込まれます。

グリーンボンドの魅力は変わらないもようで、大型起債の発行規模は2年間で3倍になりましたが、それでも応札倍率は2倍以上を保っています。

グリーンボンド発行はEUが先導-新興国は次の波となるか

世界のグリーンボンド市場では西欧が金額で50%のシェアを占め、中国のシェアは15%となり米国を上回りました。しかし、中国を除く新興国における相次ぐ起債は、市場の大きなシフトを指し示しています。こうしたシフトの好例として、ナイジェリア、チリ、中国におけるグリーンボンドの発行のほか、サウジアラビアとケニアにおける起債計画が挙げられます。この両国では環境に優しい産業へ移行するための資金調達としてグリーンボンドを発行しています。フランスは依然として世界最大のグリーン国債の発行体であり、発行残高は既に400億ドルを超えています。フランスに続いて、ドイツ、イタリア、英国が過去6カ月間に80億ドルを超える長期グリーンボンドを発行し、金利が上昇する市場環境で手堅い起債を達成しています。米国では、連邦政府ではなくカリフォルニア州がグリーンボンドの発行額で25%のシェアを占め、国内でリードしています。

欧州連合(EU)は引き続き世界のグリーンボンド市場をリードしており、2026年までに「ネクストジェネレーションEU(NGEU)」プログラムの資金調達のため2500億ユーロの起債を行う計画です。

グリーン引き受け-JPモルガンとクレディ・アグリコルが上位

2021年のグリーンボンド引き受け業務では米銀JPモルガン・チェースが1位にランクしています。同社は気候変動対策に向けて今後10年間で2.5兆ドル、そのうち再生可能エネルギーを含むグリーンプロジェクトのために1兆ドルの資金を調達すると宣言しており、この目標に従っているとみられます。引き受けランキング上位15社のうち半分は、フランスのBNPパリバやクレディ・アグリコル、英HSBCホールディングスなど欧州の大手金融機関が占めています。JPモルガン、シティグループ、バンク・オブ・アメリカ(BofA)、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス・グループなど米国の大手金融機関は、2021年は企業および政府のグリーンボンド発行における引き受けの約20%を占めており、2019年の2%から大きく伸ばしています。カナダのトロント・ドミニオン(TD)銀行は、10月にクロージングとなったEUのグリーンボンドが寄与してトップ10入りしました。

社債では公益事業、インフラ建設、不動産の企業が最も多くのグリーンボンドを発行しています。フランスと日本は、2021年は最大級のグリーン国債発行体に含まれます。

グリーンボンド保有額ではブラックロックが7%のシェアで最大

世界最大の資産運用会社、米ブラックロックはグリーンボンドの最大の保有機関であり、11月時点の保有額は約145億ドル(年初来の金額を倍増)で、2021年は市場シェアを約2%増やし7%としています。ブラックロックは、欧州ではスウェーデンの大手銀行スウェドバンク、スペインの電力会社イベルドローラ、ドイツの自動車会社ダイムラー、そして米国では電力大手のネクステラ・エナジー、アップル、通信大手のベライゾン・コミュニケーションズが発行したグリーンボンドを保有しています。また、欧州諸国の政府、日本、チリ、中国が発行したグリーンボンドも保有しています。ブラックロックに続き、米国の資産運用大手バンガード・グループが2位(4.7%)にランクインし、ドイツの保険会社アリアンツ(4.5%)、クレディ・アグリコル、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)(いずれも約3%)がこれに続きます。これらの資産運用上位15社のうち3分の2の拠点が欧州に集中しています。

2250億ユーロ相当のグリーンボンドを発行するというEUの公約、欧州中央銀行(ECB)の資産購入プログラム、そしてネットゼロ達成へ向けた世界的な取り組みなどが、資産クラスとしてのグリーンボンドの市場の成長を促しています。

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

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