LIBOR移行 専門家の見解:LCH Philip Whitehurst 氏 

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このインタビューは、ブルームバーグが業界リーダーや世界各国・地域の規制当局にインタビューを行い、その中からLIBOR移行プロセスの管理に役立つ洞察や助言を集めた「LIBOR移行:専門家の見解」の一部です。

Philip Whitehurst 

LCH 金利デリバティブサービス開発ヘッド 

「担保付翌日物調達金利(SOFR)、ポンド翌日物平均金利(SONIA)、スイス翌日物平均金利(SARON)、無担保コールO/N物レート(TONAR)の清算額は、全体として増加傾向にあると言ってよいでしょう」

Philip Whitehurst氏はLCHで金利デリバティブ業務に携わる傍ら、米代替参照金利委員会や英ポンドのなど、ベンチマーク改革に取り組む多くの業界グループにLCHの代表として参加しています。本インタビューにおいてWhitehurst氏は、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)ベースのデリバティブの将来の清算適格性、米連邦準備制度理事会(FRB)が発出したLIBORベース金融契約の今後の取り扱いに関するガイダンス、RFRへの移行作業をまだ開始していない企業に対する助言について話してくれました。

Q

LCHは、中央清算されたLIBORベースポートフォリオを市場標準のRFRベースに積極的に移行させる提案について市中協議を行った最初の中央清算機関(CCP)でした。提案の内容についてお話しください。

A

フォールバック条項自体に問題はないのですが、表面上はLIBORを参照しつつ実際には別のリスクにリンクしているスワップが発生することに懸念を抱いていました。この問題を解決するために、当社の市中協議では、LCHで清算されたLIBORスワップを、LIBOR停止日の直前に、対応するRFRスワップに補償付きで契約上変換することを提案しました。幸いなことに、会員および顧客からは強い関心が寄せられ、提案に対して強い支持が得られました。

修正した点の一つは、ブルームバーグが公表しているスプレッド調整値に関するものです。当社ではこれを変換された契約のRFRレッグで、複利計算されないスプレッドとして使用することにしました。また、現在から年末までの各種LIBORの経済効果を維持することも先日決定しました。米ドルLIBORの公表が2023年6月まで継続されることになったため、対象となる米ドルLIBORについては転換プロセスを当面先送りすることができます。

Q

これにより、ポンド、スイスフラン、円、ユーロ建のLIBORベースデリバティブの将来の清算適格性はどうなるのでしょうか。

A

当社の計画では、転換日に清算適格性を取り消す予定です。現状では、英ボンドLIBOR契約については2021年12月18日の週末、円、スイスフラン、ユーロのLIBOR契約については2021年12月4日の週末に予定されています。つまり、この期日以降これらのベンチマークにリンクしたスワップの清算を当社は行いません。これにより、LCHで清算されるスワップにリンクして清算されるスワップション取引に問題が生じる可能性があるとの指摘があり、現在その解決策を検討していますが、新たに組成されるLIBORスワップが清算の対象にならないという点を明確にする必要があるため、慎重な対応が必要とされています。

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Q

FRBは先日、監督下にある金融機関に対し、2021年末以降にLIBORベースの新規契約を締結しないようにとの指針を改めて示しました。このガイダンスは、中央清算にどのような影響を与えるでしょうか?

A

これは興味深い問題ですが、課題が発生する可能性もあります。FRBのガイダンスは明確であり、新規の米ドルLIBOR契約を締結することが適切と考えられる状況は非常に限られています。しかし、そのような状況があること、そして清算義務が依然として適用される可能性があることを考慮すると、CCPが一定期間、適格性を残しておくことは、システミック・リスクの最小化に役立つかもしれません。その場合、流動性を注意深く監視する必要がありますが、当社はこのような状況にも対応できるリスクフレームワークを有しています。

Q

過去12カ月間のSOFR、SONIA、SARON、TONARのLCHにおける清算額の推移について教えてください。

A

各市場はそれぞれ別個の存在ですが、全体としては増加傾向にあると言ってよいでしょう。SOFRについては、取引を加速させるイベントが二つありました。一つ目は割引率のSOFRへの切り替えで、これによりSOFRは他のRFRと同等の地位を獲得しました。二つ目は、他のすべてのLIBORにも一律に適用されたものですが、2021年3月5日の英金融行為規制機構(FCA)のLIBOR停止日に関する発表です。これにより各LIBOR通貨のRFRの流動性が一斉に向上すると考えられます。

Q

RFRへの積極的な移行をまだ始めていない企業に対してアドバイスをお願いします。

A

当社が公表した転換プロセスに関する一つの考え方は、もちろん当社で清算されるスワップのみに適用されるものですが、このプロセスがバックストップあるいはベースラインを提供するというものです。当社の清算への参加者は、何もしなければどうなるか知ることになりました。これにより、これまで移行作業に受け身であった企業に明確な目標が提供され、前向きに移行作業を検討するきっかけになればと考えています。

Q

企業がLIBORからの移行を準備する際に直面する最大の障害は何だと思いますか?

A

移行プロセスの規模の大きさと複雑性に関する懸念をよく聞きます。こうした中で当社が中央清算されたスワップの取り扱いを明確にしたことにより、移行に関連する要素が少なくとも一つは明確になったのではと期待します。

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

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