発電の脱炭素化ロードマップ:⼯業セクター

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本稿は、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の上級業種担当アナリスト北浦 岳志(工業)とBIアソシエイト・アナリスト本間 靖健が執筆し、ブルームバーグターミナルに掲載されたものです。(2021年1月25日)

電⼒の脱炭素:⽕⼒発電所での⽔素利⽤、脱炭素に⾞以上の効果

世界的な脱炭素の流れは、過去1年で加速した印象です。今後は、⽶国新政権への移⾏で追い⾵がどれだけ強まるかに注⽬が集まるでしょう。⽇本政府も「2050年カーボンニュートラル」を⽬指す⽅針を打ち出し、本腰を⼊れ始めました。電気⾃動⾞の推進について、トヨタ⾃動⾞の豊⽥章男社⻑は発電時の⼆酸化炭素(CO2)排出に関する課題を提起し、政府による電源構成⽬標が回答として提⽰されました。2050年の⽬標達成に向け、発電分野では⽔素、アンモニア、原⼦⼒およびカーボンキャプチャー技術が鍵となりますが、これらの技術では⽇本企業に優位性があると見ています。⽕⼒発電に⽔素を活⽤することで、⾃動⾞以上の⽔素価格低減、ひいてはコスト削減効果が期待できるでしょう。

1. 2050年までに発電の過半が再⽣エネルギーに、⽔素・アンモニアで1割

⽇本は従来、⽕⼒発電⽐率が⾼く、11年の震災後は原⼦⼒発電の停⽌に伴い⽕⼒への依存がさらに⾼まっています。経済産業省は2050年に向けた電源構成について、太陽光、⾵⼒などの再⽣エネルギー⽐率を5−6割へと⾼め、原⼦⼒と化⽯燃料を合わせて3−4割、⽔素とアンモニアが1割程度との参考数値を⽰しています。また、各電源構成における脱炭素へ向けた⽅針が⼤枠で⽰されました。 既存の発電インフラ活⽤には⽕⼒発電設備の効率的な活⽤が重要となりますが、三菱重⼯はガスタービンにおける⽔素混合⽐率を25年までに100%へと、試験的に成功している3割から引き上げたい考えです。またアンモニアは、⽯炭との混焼も可能なため段階的に⽯炭⽐率を下げる効果が期待されるほか、有⽤な⽔素キャリアとしての側⾯もあり、⽔素の需給に幅を持たせることも可能となります。液化天然ガス(LNG)などのガス発電は⽔素への置換が有効ですが、⼀部残る可能性がある⽯炭に関しては、アンモニア使⽤による⽐率低減と、三菱重⼯、川崎重⼯、東芝等が有するカーボンキャプチャー技術が有⽤となるでしょう。

⽇本の主要電源構成の変化と⾒通し

Source: Ministry of Economy, Trade and Industry

2. ⽇本のCO2直接排出、発電が4割と最⼤

⽇本の部⾨別CO2排出構成では、直接排出で⾒ると発電(エネルギー転換部⾨)が全体の4割を占め、最大となっています。その⽤途を含めた間接排出では、産業分⾨と運輸部⾨で過半を占めています。政府の⾃動⾞電動化推進に対してトヨタの豊⽥社⻑が課題提起した、発電部⾨における排出削減の重要性は明⽩であり、今後発電分野における排出削減が進めば産業部⾨、家庭部⾨をはじめ多くの分野で排出削減が可能となります。その⽅向性が徐々に⽰されていることは好感できるでしょう。発電における⽔素やクリーンな電源の供給によって、産業分野でもエネルギー減少に向けた取り組みに幅を持たせることができ、不透明な未来における選択肢の拡⼤にも寄与するでしょう。発電における脱炭素関連の⽇本企業として、三菱重⼯、川崎重⼯、東芝、⽇⽴、三菱電機、IHIなどが挙げられます。

⽇本の部⾨別CO2排出構成(2018年度、直接、間接)

Source: Greenhouse Gas Inventory Office of Japan

3. ⽕⼒発電所は⽔素コスト低減に⾞輌200万台分以上の効果も

経産省資源エネルギー庁は、現在の⽔素価格を100円∕Nm3としており、これは現在の⽔素ステーションでの販売価格と同⽔準です。2030年までには30円∕Nm3、その後はLNG価格を意識した10円台まで下げる意向を⽰しています。規模の経済が重要になる中で、発電分野での活⽤は将来の⽔素価格低減の鍵となるでしょう。資源エネルギー庁の試算では、LNG⽕⼒発電所1基の年間⽔素使⽤量は燃料電池⾞223万台分に相当し、2−3基で⽔素⽕⼒発電への移⾏が実現すれば、それだけで⽇本の年間⾃動⾞販売台数分を燃料電池⾞に置き換える相当の⽔素需要規模と炭素排出低減が得られます。LNG⽕⼒発電の⽔素化は既存設備からの移⾏が検討されています。今後、国内外を含めた⽕⼒発電の導⼊時に⽔素燃料への移⾏を⾒据えた投資を⾏えば、環境コスト、投資コストの両⾯でメリットがあるでしょう。

⽔素価格低減の⽬標

Source: Ministry of Economy, Trade and Industry

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